カンフーパンダ4の悪役「ザ・カメレオン」のキャラ描写の欠点
カンフーパンダ4見ました!
単刀直入に言うと面白いですが、惜しいところも多い作品です。
前作カンフーパンダ3も惜しい作品でしたが、
今作はそれ以上にもどかしさを感じてしまいました。
特に今作の悪役であるザ・カメレオンの描写で「ここおかしくない?」と疑問に思う箇所が三つあります。
一つ目はカメレオンの過去の矛盾です。
大雑把にカメレオンの過去を説明します。
「彼女は身分が低く貧しい暮らしをしていた。
富と名誉を得るためにカンフーマスターになろうと決意する。
しかし、己の出自と小さな体格を理由にカンフー学校で学ぶことを許されなかった。
失望した彼女は変身術(曰く魔法)を習得し、カメレオンの軍団を率いて中国全土の支配を目論む…」
生い立ちの時点で突っ込みどころがあります。
体格が小さいからカンフーが学べない…マスター・カマキリがいますよね?
というかシーフー老師も小さいですし、カメレオンと大差ない身長のカンフーマスターも結構な数いましたよね?
身分の低さに関してもマスター・ツルはカンフー学校の雑用係から翡翠城の
マスターファイブになりました。
まあ仮に、カメレオンが運悪く悪質なカンフー学校に当たって就学の機会を奪われたとすれば矛盾はありません。
けれども矛盾が消えたからと言って彼女の問題がなくなった訳ではありません。
二つ目はカメレオンの出番の少なさです。
カメレオンは今作の悪役でありながら、今までの悪役と比べると
出番が圧倒的に不足しています。
タイランやシェン大老には派手な戦闘シーンや心境の供述、
過去の回想が多く盛り込まれていたので、魅力的な悪役として活躍できました。
過去の回想が限定的だったカイ将軍ですら戦闘シーンを中心に出番が多くあります。
むしろカイ将軍の出番を戦闘シーンに集中して作ることで彼のパワフルさを際立たせようとする制作陣の意図を感じました。
ですが、今作はそもそも彼女が登場するシーン自体が少ないのです。
いちおうクライマックスでポー&ジェンvsカメレオン戦があります。しかし、
己を信じる大切さを見つけたポーvsタイラン戦。
過去に囚われず今を生きることを決意したポーvsシェン大老戦。
自己を確立し新たなる境地に到達したポーvsカイ将軍戦。
この三つと比べるとポー&ジェンvsカメレオン戦はイマイチパッとせず、テーマもよく分かりませんでした。
カンフーパンダ4のクライマックス戦は、
小道具や地形を利用したトリッキーな戦いでもなければ、
感動的な奥義の習得があるわけでもないので※印象が薄くなっているのです。
※檻がギミックになっていましたが、投擲や拘束以外の使用方法はありません。
※カメレオンの形態変化による攻撃がありましたが、意味もなくただ変身しているだけの
印象です。
※ジェンがスカバルーン(シュカドゥーン)を習得しましたが、積み重ねがないので感動は
ありません。
あの戦いにはジェンがカメレオンの呪縛から解き放たれ、精神的に成長するという重要な役割があると思います。
しかし、その部分もカメレオンの出番が少ないせいで重要な場面のように感じられませんでした。
これまで彼女の過去の矛盾と出番の少なさについて語りましたが、
彼女が悪役として相応しい事績を残していればここまで大きく批判していませんでした。
三つ目はカメレオンの脅威があまりに低いことです。
彼女の目的は魂の王国にいる悪のマスターの力(魂)を使い、中国全土を支配すること。
たいそう立派な野望ですが、実際に彼女が中国に与えた被害はネズノキ都を占領し、地元のヤクザから財宝を巻き上げたくらいです。
魂の王国にいる悪のマスターから力を奪うことはできましたが、それは魂の王国の被害
なので中国の被害には数えられません。
戦闘力はカンフーパンダ本編の悪役の中では最弱であり、カメレオンの軍団を率いる統率力も発揮できませんでした。
女性の悪役ならOVA「マスターへの道」に登場するウー姉妹の方が戦闘力も統率力も
上です。
他の悪役にはない変身能力という個性がありますが、その能力を使って何をしたかと言えば「坑道で働く非戦闘員を威圧した」だけでした。
せっかくタイランに変身したんですからチョーゴン刑務所を襲撃すればよいのに、
残念ながら実現しませんでした。
(まあ、カメレオンがカンフー技を真に習得できなかったために、脅迫以外で何もできなかったのだと思われます。仕方ない…)
タイラン、シェン大老、カイ将軍は過去、現在において中国に甚大な被害を与えた凶悪な人物です。
ところが彼女の悪行はアニメシリーズで収まるほどスケールの小さいものでした。
(↓4人の所業をまとめた表…)
(カメレオンの悪行が比較的軽いせいで四人の中で浮いてしまう💦)
ここまで彼女のキャラクター描写の欠点をあげつらいましたが、
もちろん良い点もあります。
それはジェンとの疑似家族の関係性です。
カンフーパンダは疑似家族の物語といっても過言ではありません。
主人公からサブキャラ、悪役にいたるまで疑似家族、疑似兄弟の関係を持っています。
今作は彼女ら二人がその役割を引き受けたのでしょう。
(女性同士の疑似家族はカンフーパンダ4が初である)
ジェンとカメレオンの関係性を表す個人的名シーンがあります。
「ジェンは孤児であり、センザンコウのハンが率いる悪党たちと共に細々と暮らしていた。
ある時カメレオンが行列を成していた。彼女の椅子に装飾された琥珀石がジェンの目に入る。それを盗もうとするがカメレオンに気づかれてしまい、舌で拘束された。
カメレオンはジェンを睨む。しかし彼女は周りの者と違い、臆することもなく堂々とたたずんでいた。その姿に素質を見出したカメレオンは、ジェンを養育するようになる…」
好き(直球)
ほんの数秒の短いシーンですが、カメレオンの歪ながらも嬉しそうな声や含みのある表情が非常に印象的でした。
ジェンの父代わりをしていたと思われるハンが、自分を捨てカメレオンに鞍替えするジェンを悲しそうに見ている所も良きです…
前作とは違う「一風変わった疑似家族」を描いたカンフーパンダ4随一の名シーンだと思います。
~まとめ~
カメレオンの描写は光るところがあったものの、影も大きく前作の悪役の評価と比べると低くなってしまった!
以上!
追伸 カメレオンの変身能力を使ってタイランvsポーを再演させたのは良いが、肝心の本人が檻で観戦しているのはもったいないと思いました。
本当のポーvsタイランを見たかったなぁ
トリミング前の画像 初めて描きました |
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